コラム

■判断と対応力

最近、教科書やマニュアルどおりに様々のモノが動かなくなってきているように感じます。

たとえば、ここ数年の国内外での選挙や国民投票の想定外の結果などは私たちの記憶に新しいものですし、経済活動などでも日米の金利差がどんどん広がっているのに為替レートは一向にドル高の方にはいきません。私たちが高校や大学で学んできた教科書や過去の経験則から積み上げてきた定説、パターン、マニュアルといったものが絶対的価値を失いつつあるようにも思えます。

一言でいえば、「サプライズの日常化」ということなんでしょう。まあ、退屈しないという点ではいいのでしょうが、想定外も極まれば恐怖すら感じますよね。そういった、想定外の場に身を置いたとき、私たちの「判断と対応力」が試されます。

先日の成人式当日のあの事件、福岡の店長さんの対応にはホッとさせられました。この方に対して何よりも敬意を払うべきは、その責任感もさることながら、当日その場での判断と対応力だと思います。あのケースでは、後になって何を言おうが何をしようが、全く価値をもちませんからね。

苦しい時、見て見ぬようにしたり、固まってしまったり、逃げ出す御仁はほんとうに多いです。私もこれまでに吐いて捨てるほど見てきました。こういった方のほとんどは、決まって延々と「後講釈」をなさいます。なにもそんなこと言わなくていいのに、あちこちで口数多く語られます。「あの時はそうするしかなかった」、「そもそも会社が、上司が・・・」なんてね。

一昔前にこんなことがありました。お正月の特訓講座で、近隣の10数校舎から受験生を集めた時のことでした。会場責任者の方が30分前になっても現れず、会場校舎の中に入ることができません。どんどん生徒たちは集まってきますが、その場にいた職員のみなさんは何らの対応をするでもなく、「どうしよう・・・」の状態でしたね。私、その日は午後からの出番だったんですが虫の知らせだったんでしょうか、早めに出てきてその場に居合わせました。開始まで20分を切ったところで、その辺りから大きめのブロックを探してきて、入り口のガラス戸を叩き割って中に入りましたね。ブロックを持って入り口の前に立ち、まさにガラスを叩き割ろうとしている私に対して、傍にいた職員の一人が「それをどうするんですか?」なんて言葉を投げかけたことが今でも印象に残っています。(笑)

その時、その場にいなかった方があとでなんと言おうが、そんなものはどうでもいいんですよ。目の前で火事が起きているのに、「なぜこんなところで火が出たのか」を議論してもしょうがないですよね。横でゴチャゴチャ言っているような輩は邪魔にしかなりません。とにかく、火を消すことが先決ですよね。あとで叱られても、笑ってごまかせばそれですむことですからね。

私がはじめて「長」の付く仕事をした際に、今も尊敬する上司の方にこう教えていただきました。「これからはあなたの後ろには誰もいない。ほんとうはいるんだよ、本部長も専務も社長もね。でも誰もいないと心に決めてやっていかなければならない」。その教えどおりに自分がやりきれたか、期待に応えられたかはわかりませんが、今でも大事に大事にしている言葉です。

さて、今日はセンター試験の初日、そして今月後半には中学入試に続き高校入試も始まります。試験場での受験生は「ただひとり」、後ろに上司もいなければ、前に部下もいません。彼らの判断と対応力が試され、鍛えられる時間(とき)です。

Takahide Kita

 

■さてさて、今年も始まりました!

昨日、中学受験の他県入試が始まり、夜半には受験した子供たち全員の合格の連絡が届きました。2月に控えた第一志望中入試の前哨戦とはいえ、「いよいよ始まったなあ」といったところです。続けて、今月後半からは高校入試のほうも「滑り止め」や「特待生の権利獲り」を目的とした他県入試がスタートします。

この段階での入試はあくまで2月本番に向けての準備と考えていますから、子供たちには今回の失敗や次回に修正すべき事柄をメモなどに箇条書きさせておくことが絶対に必要です。入試期間は短いようで受験生にとっては意外に長いもので、受験をひとつ越えるごとにさらなる成長がのぞめますからね。前哨戦での修正点を残り3週間の受験勉強の中で強く意識させながら、最後の指導を行っていくことになるわけです。

ギリギリのところで受験をする子供たちにとっては、合否はやはり「問題の出方ひとつ」でしょうが、何とかここまで頑張って「勝ち負けのレヴェル」にたどり着いたこの子たちに最高の達成感を味あわせてあげたいものです。残念ながら、私自身には第一志望合格といった経験がないものですから、なおさら強くそう思いますね。

どうか、この子たちが後悔のない受験ができますよう、そして、受験の神様のご加護がありますように!

今年もまた、受験生たちの教室には「耐雪梅花麗」の五文字が掛かっています。

Takahide Kita