コラム

■馬鹿をバカと言わない世の中はそれ自体が・・・

最近では、「馬鹿」って差別用語かなんかになっているんでしたっけ?いつ頃から使わなくなったんでしょうか。

たしか20年ほど前だったかな、TVコマーシャルである女優さんが「このおバカさん」なんて語りかけてくるのがありましてね、結構な数の抗議が広告主のほうに寄せられたとかで、すぐにCM中止に追い込まれたのを記憶しています。

みなさんは馬鹿の語源をご存知ですか?いくつかの説があるようですが、私が記憶しているのは高校の漢文の授業で教わった「史記」の一説によるものです。たしか概要は次のような話だったと思います。

【指鹿為馬(しかをさしてうまとなす)】秦の時代に権勢を誇った宦官が皇帝に対して謀反を企んだ際に、自分の味方と敵を見分けるために皇帝の前に鹿を連れてきて、「これは素晴らしい馬だ」と言います。皇帝は「これは鹿だろう」と言いますが、この宦官の権勢を怖れたまわりの重臣たちは、「鹿です」と答えるといった話で、このような連中をまとめて「馬鹿」というそうです。ちなみにこの宦官は趙高といいまして、のちに謀反を決行する際に、おそれて尻込みする実行者に対して「断而敢行鬼神避之(だんじておこなえばきしんもこれをさく)」と言って彼の尻を叩いたことでも知られています。

私の幼少期には、そこかしこで「バカ」が溢れていたように思います。赤塚不二夫さんの代表作「天才バカボン」なんてテレビアニメの大人気作品で、当時のほとんどの子供たちが見ていたんじゃないかなあ。そもそも主人公の名前が「バカボン」で、学校の先生も「バカボン君」と呼んでいましたよ。バカボンのパパさんなどは出身大学が「バカダ大学」ですからね。ご丁寧に「都の西北早稲田の隣り~♪」といった校歌までありましたよ。もちろん校歌の終盤は、「バカダ、バカダ、バカダ、バカダ・・・」の連呼になります。

『人に対して「お前はバカだ」と言うような人間のほうこそ馬鹿だ!』なんてフレーズが今も昔もよく用いられますが・・・まあ、ある状況下に限定すれば正しいとは思いますが、私も小さいころには子供ごころに「そんなことないでしょ・・・」と内心では思っていましたね。

馬鹿をバカといえない社会って、まさにその語源どおりの「馬鹿」なんじゃないかな。(笑)そもそも、人からバカと言われて笑って流せる人は馬鹿なんかじゃありませんよね。それを気にして過剰に反応することのほうが、むしろヤバイんじゃないの?

ちなみに、関東と関西では「バカ」と「アホ」のニュアンスは全く逆になりますから、注意しておかないと大変なことになりますよ。まあ、今日は少しばかり言葉遊びをしちゃいましたね。失礼しました。

Takahide Kita

■こんな「近未来予想」どうですか?

「運転免許20回落ちた、何度受けても合格できる気がしない。日本死ね!」なんてSNSにアップされたことが引き金になって、○○新聞が大きく取り上げる。すると△△党の議員さんが国会で取り上げて、代表質問したりします。

議員さん「なぜ、こんなに多くの国民が自動車運転免許試験に合格できないんですか?」

政府答弁「交通における安全確保の観点から従来どおりの試験をおこなっており、適正と考えております。」

議員さん「そもそも筆記試験で90点が合格ラインなんて、高すぎるでしょう。90点じゃなきゃいけない理由は何ですか?70点じゃダメなんですか?60点じゃ安全が確保できない理由を示してください。」

政府答弁「従来どおりの試験を適正に実施していくことが妥当であると考えております。」

議員さん「答弁になっていません!このことによって、一体どれだけの国民のみなさんからドライブの楽しみを奪っていると思っているんですか!現行の試験での合格率がすでに20%を切っているんですよ。今すぐに善処する必要があります。これが国民大多数の声なんですよ!」

結果、△△党は次回の衆議院議員総選挙において、NPO法人「自動車免許試験に合格できない人を支援する会」や自動車メーカー業界団体の要請を入れて、「全ての国民に自動車運転免許の交付」を公約に掲げることになりました・・・

今、こんな話を聞けば「そんなバカなことにはならない」と思うでしょう。僕は、きっと似たようなことになると思いますよ。私が生きているうちには、そうなって欲しくないですけどね。だって、今現在、私たちの身のまわりで起こっていることって、30年前には「そんなことありえない」と思っていたこと多いでしょ。20年前の人が聞いたら、呆れて空いた口がふさがらないといった類のものがいっぱいあるじゃないですか。願わくば、今私たちの目の前に次々に出現する「なんでもありの茶番」が20年後の人たちから、「そうだね、あんなバカげたことをやっていた時代もあったよねぇ~」なんて笑い話にされていて欲しいものです。

その歴史や風土から独特の気風で知られる福島県の会津地方では、今でも教室や道場にこんな書が掛けられているところがあると耳にしたことがあります。「ならぬことは、ならぬ」。思考が硬直なものになり、視野が狭くならない程度に私たちも心の片隅には置いておきたい大事な言葉だと思いますね。

Takahide Kita