コラム

■ファーストペンギン

ペンギンの習性として、誰も海に飛び込まないとみんな氷の上で群れのままじっとしているというのがあります。そんなときに、リスクをとって真っ先に飛び込む者を「ファーストペンギン」といいます。経済の世界で新しい分野なりビジネススタイルを確立した先駆者に対してリスペクトをもって「ファーストペンギン」と言ったりもしますね。

物事を最初に始めて、形にした方を私は心から尊敬します。私から見て、その果実は光り輝いたものに映ります。最初に飛び込んだ者は賞賛に値しますし、彼のとったリスクに相応しい利益を手にするべきだとも思います。一方で、それを模倣し、なんやかんやと訳の分からん理屈をひっつけて自分の利益を積み上げる。こっちには全く興味がありませんね。

最近、学習塾のチラシでファーストペンギンを気取ったようなモノを目にしました。「内申27で早慶付属高に合格」、鬼の首とったように繰り返し宣伝されています。「えっ、この程度のことが大手塾のチラシ最上段を飾るのか?」なんて見ている私のほうがビックリするというか、むしろ赤面しちゃいます。

進学塾のSやWにきいてごらんなさい!そんなケースは毎年吐いて捨てるぐらいあります。今までに私個人が直接指導した子どもたちの中だけでもざっと数えただけで100人ぐらいはいるはずです。私の場合の早慶付属高におけるレコードは内申18(1が3つありました)からの合格でしたね。

PEGのような設立してからたった1年半、よちよち歩きの寺子屋みたいな塾で、しかもわずか18名の中3卒業生の中ですら内申25前後から立教、明治、中央あたりへの合格は何人も出ています。そんなの日常茶飯でしょ。

まあ、今まで別の視点からしか子どもたちを見ていなかったからびっくりされたんでしょうね。でも、そのこと自体をダメなことだなんて考えてはいません。これってとってもいいことだと期待しているんですよ。これを機会にそちらの塾さんでも内申点という色眼鏡で子どもたちを見るようなことはもうやめにして、「この子にだけできない理由は何もない!」といった調子になっていただければ、そしてそれぞれの最高峰を臆することなく子どもたちと一緒に目指してくれるようになれば・・・ほんとうにいいですよねぇ~。さらに横に広がってこういったことがあたり前になれば、素晴らしいと思いますよ。受験勉強に向かう子どもたちの閉塞感も取り払われて結構活気づくんじゃないかな。

そこまで行き切れれば、この「なーんちゃってファーストペンギン君」はほんとうの意味での「ファーストペンギン」になれるんだろうなぁ、と思います。まさに「Good job!」と言えますよね。

Takahide Kita

■「見真」(真を見よ)

今日は春のお彼岸です。最近では、「お彼岸」と言われてもピンとこない方のほうが多いんじゃないかな。私のように小さいころに仏壇のある家で育った者にはそこそこ大きなイベントなんですけどね。

ちなみに「ぼたもち」と「おはぎ」の違い知ってはりますか?春のお彼岸にいただくのが「ぼたもち」(牡丹)、秋のお彼岸にいただくのが「おはぎ」(萩)というわけで、まあ同じものを季節感にあわせて使い分けているという、わが国らしい呼称です。

私の実家は播州の姫路なもんですから北陸地方と並んで浄土真宗の地盤のひとつです。私のところもいわゆる「お東さん」でして、浄土真宗東本願寺大谷派で先祖のお祀りをさせていただいています。お彼岸が近づいてくるとお寺さんから彼岸の案内が来ます。実家とは別にこちらで檀家になっているお寺からも先日案内が送られてきていましたね。

ところで、表題の「見真」なんですけど、東本願寺の御影堂の千畳敷の正面にドーンと掛けてある立派な額の文字なんです。これ、おそらく親鸞上人の諡号「見真大師」に由来しているんでしょうが、もともとは仏教用語で「知恵によってことを見きわめる」という意味なんです。私は、年に数回ですが御影堂にお参りさせていただくたびにこの額を拝見しますが、「真実を見よ、ものごとの本質から目をそむけるな」と言われているように感じています。

日常生活でものごとの本質を外さないようにするということはとっても大事ですが、私なんかも目の前に起きている事象の本質から目をそらし、自分の都合のいいように見てしまいがちです。時として「見真」を思い起こすことが、そんな自分に対してのブレーキや戒めの役割を果たしてくれているようにも思われますね。

私が目の前のスタッフや子どもたちと接するにあたって、マネージメントの手法や話術、数学の教科指導なんかよりもはるかに大切にしていることがあります。「できる人はその本質的な部分をしっかりとらえて決して外すことがない、逆にダメな人はそこから目をそらし、どうでもいいようなことばかりやって時間を浪費する」といった「モノの見方」や「行動規範」です。日々、エラそうにスタッフや子供たちに向かって語り続けていますよ。そう、耳にタコができるほどにね。

さて、今日は彼岸の中日ですが、桜も開花したというのに一気に冷え込んで関東では雪が降っています。今夜半から明日の朝にかけて積もるみたいですね。いやぁ、まいりました!「暑さ寒さも彼岸まで」の言葉のとおり、これを限りに寒さともしばらくはおさらばしたいものです。そして、今日一日は20年ほど前に早々にあっちに行った親父のことでも思い出しながら、西に向かって手を合わせることにします。

Takahide Kita