コラム

■「道義的責任はあるが、法律的には問題ない」なんてねぇ、、、

1年間に何度か聞かされるこのフレーズ、そう、政治家の皆さんが問題を起こした際にしばしば用いられる例の方便です。本来、政治家の皆さんは私たち一般の国民に比して、より高い志や道義心をお持ちのはずなんですよね。それゆえに議員の皆さんを「選良」なんて呼んだりもします。そもそも、法律は最低限の道義として規定されたものですから、「ここから先はアウト!」といったラインですよね。「まあ、言うに事欠いて・・・」なんて呆れる破廉恥な話ではありますが、子供たちには聞かせたくはないフレーズであることは確かです。

まあそれはさて置き、10年ほど前から私が日々の教科指導をやっていく上で困っていることの一つに、次のようなことがあります。

特に中学生についてなんですが、PEGで指導している指導内容の半分ぐらいかな・・・学校で指導しない単元や知識なんですけどね、子供たちが後回しにしちゃうんですよね。「学校での定期テストに出ないから」、「模擬試験に出ないから」、「まあさしあたっては困らないので」、なんて具合でどんどん優先順位が下にもっていかれちゃうんですよ。みんなが志望する上位難関校の入学試験では、あたりまえのように出題されますから、結果的には入試が近づいてきた頃になって困ったことになってくる。

これに対して、私も手をこまねいているだけというわけにはいきませんので、手を変え品を変えて子供たちを押し戻そうとします。これがまた・・・教科の指導に比べてもかなりの重労働になってくるんですよね。

最近では、進学塾という看板を掲げている学習塾でも学習指導要領をこえる範囲について、塾の指導内容から削除することが検討されていると聞いたりもします。まあ、私が大手進学塾にいた頃にもそういったことを主張する方はいることにはいましたけどね・・・さらに、そういった類の塾の教科研修では、「そんな難しい内容なんて教える必要はない!そんなことよりも、もっと工夫をして生徒を楽しませろ、笑顔で授業をしろ、叱るな褒めろ!」なんて様子らしいですからね。これじゃあ、子供たちが勘違いしちゃいますよ。前にも言いましたが、最初から楽しい場所は、そういった目的で用意された場所に過ぎません。まあ、遊園地などの観光施設のようなものが典型ですが、決して自分を成長させ、高めていくような場所ではないんですよ。

加えて、学校の定期テスト対策まで塾でやっちゃうみたいで・・・その子たち、これから先どうやって勉強と向き合っていくことになるんでしょうか。高校に入学してからも、学校の定期テスト勉強すら自分でできないような、残念な高校生になっちゃいますよね。

そんなこんなで、子供たちの方でも、「でも、学校で困らないからいいでしょ!」なんて直接口に出して言うことはなくても、頭ではダメだとわかっていても、結局のところ軽く扱うことになってしまう。

でもね、学校の指導内容は「これ以上は一歩も引けない最低限」の内容なんですよね。「学校では困ってないから大丈夫」なんて言ってしまえば、表題の「道義的な問題はあるが法律的には問題ない」といったフレーズと同じレベルの話になっちゃいます。要するに、このラインを下回ったらアウトなんですよね。

本来あるべき姿からどんどん遠ざかって行っちゃう。その子自身のスタンダードがどんどん下振れしてしまいます。15歳の子に要求される学力水準は20年前も、今現在も、そして20年後も同じでなきゃいけないと考えているんですけどね。というか、むしろ上がっているのが普通でしょうよ。

Takahide Kita

■さて、冬支度!

私、京王沿線の閑静な住宅街に住んでいるんですが、毎日、最寄り駅まで5分ほど歩いてから電車に乗るんです。その道程が短いながらも季節感があって結構なお気に入りなんですよね。

ほとんどのお宅が庭付き一戸建てなもんですから、様々な庭木が植えてありまして、歩きながら季節ごとの花や匂いが楽しめるというわけなんです。キンモクセイが終わった今の時期は、柿の木に実が茂って今にも落ちてきそうな様子です。もう少し先になれば寒椿がつぼみをつけてきます。

そういった中で、一軒、また一軒と庭の植木や垣根の枝打ちに植木屋さんが呼ばれてまるで床屋のおじさんが手際よく髪をすいていくような感じで枝打ちをしているんですよね。ああ、このお宅ではそろそろ冬支度を始められるんだな・・・なんて思いながら、毎日ぼんやりと歩いています。そういえば、子供のころ私の実家でもちょうどこの頃に松の木の散髪をしてもらってたな、なんて思い出して少々懐かしくなりましたね。

現在の自宅は、マンションの3階なので植木などの庭の冬支度の必要はありませんが、冬に向けてはちょっとした程度の準備は必要です。そうですね、次の休みあたりには、スーツの上から着る厚手のコートや買い物に行ったり、自宅の近所をちょろつくときなんかに必要な保温性ベンチコート、マフラーなどのナフタレンの匂いを落としておこうかな。陰干しをしたり、香を焚いたりと・・・いつでも着ることができるように準備しておかないといけませんよね。

仕事のほうでの冬支度はほぼ完了しています。まあ、こちらは冬支度というより冬期講習から新年度にかけての準備といったところです。よく、「長い冬を越えて、待ち遠しい春」なんて聞いたりもしますが、私たちのように受験生と一緒にいると、長い冬といった感覚はほとんどありませんね。ここから先の3ヶ月は受験校を確定させて、あとはクリスマス、正月など一切お構いなしで、一気に突っ切ります。物理的にも精神的にも一年で最も密度の濃い期間と言ってもいいでしょうね。

やっと落ち着いた頃には、梅の花はすでに満開であとは桜の開花を待つ、といった調子ですからね。せわしいがゆえに冬の長さを感じることがないという、どちらかと言えば、少々情けないといった類のものになりましょうか。

そういったせわしい冬の先に、今年もまた「雪に耐えて梅花麗し」のたとえの如く、見事な凛とした花をいっぱい咲かせて欲しいものです。

Takahide Kita