コラム

■意識がそこになければ、つかめるものもつかめない

「自分には運がない、チャンスがめぐってこないよなあ・・・」ってしばしば耳にするフレーズですよね。

私は、チャンスなんてものは皆に等しくめぐって来るものだと思っています。ただ、そこに意識がないような場合は、自分が今「好機」にあることにすら気がつかないですよね。なによりチャンスが訪れたときに備えて、それを掴み取るための準備を怠らなければさらに成功への確率を上げていくことができるでしょ。

日本人には結構ファンが多い「三国志演義」でも有名な司馬懿(仲達)は、宮廷クーデターにより魏の全権を掌握し、西晋建国の礎を築いたときにこんな言葉を言い放ったと伝えられています。「私は剣を抜いたことは一度しかないが、何十年もの間、剣を磨くことは決して怠らなかった!」

言ってくれますよねぇ、ゾッとするくらい格好いいですよねぇ。

私自身にはもうこの先、剣を抜くような機会はおそらくないでしょうが、仕事柄、子供たちにはそれぞれがチャンスを掴み取るための剣の磨き方を伝えていかなければなりません。

私、合格可能性を尋ねられた際に「問題の出方ひとつ」といった言い方をよくしますが、これって誰に対しても適当に言っているわけじゃあないんですよ。内申点がオール3なくても、偏差値で10や20足りていなくても、そのレベルに特化した指導を受けてきた場合は合格の可能性が残されていますからね。そのために費やされた子供たちの準備は、まさにその勝負の瞬間に勝つため、しっかりと剣を磨いてきたということに他ならないでしょう。

昔、誰かから教えていただいたことがあります。日本中には作家志望という方が幾万とおられるそうですが、その中でその一年間に、たった一本でも原稿を書いたという方は十人に一人もいないということだそうです。「そうなったらいいなあ・・・」、「できたらいいなあ・・・」は単なる願望に過ぎませんからね。まず、そうはなりません。

今日から2学期の授業が始まります。受験生たちに、「怠ることなく剣を磨き上げる」ことを今日も伝授していきます。

Takahide Kita

【本日より、校内掲示を秋バージョンにしてみました】

aki

■「千疋屋」おそるべし!

千疋屋総本店、高級フルーツの代名詞ですよね。江戸時代から続く日本橋にある果物商の老舗中の老舗です。私も、お世話になったみなさんに中元や歳暮、様々なお祝い事などで送らせていただいたりする際にちょくちょく利用させていただいております。のれん分けで独立された京橋千疋屋、銀座千疋屋などもありますが、私はやっぱり総本店がいいですね。

ちなみに、私、千疋屋の生フルーツは食べたことがないんですよね。フルーツジュレや各種スイーツなどは頂くこともありちょくちょく口にはしますが、生のフルーツは他人様に送るばかりでしてね。

ところで、この千疋屋のフルーツギフト、ほんとうにすごいんです。その日の最高級のものを仕入れているだけではなく、ひとつひとつのフルーツに品質保証があったり、また仕入れ担当の方からのメッセージなども付されているんですよね。そこには「食べごろはいつか」、「美味しく頂けるおすすめの食べ方」などが記されていたりもします。ここまでくると、もう果物というより宝石かなんかの扱いですね。自分たちの「商品」に徹底したこだわりを持つ、ほんとうに素晴らしいことだと思います。そこには誇りや矜持すら感じることができます。

その時々の世相や流行に対応して、柔軟に立ち回ることは確かに重要なことだとは思います。しかし、収益が見込まれる方面に無節操に手を伸ばし、もともとが何の会社であったのか世間から忘れられてしまうようなケースも最近では多くなってきましたよね。一方で「ブランドの持つ力」について考えるときに、「これだけは決して変えない、これを譲ってしまったら、もはや自分たちではなくなってしまう」、といったことも千疋屋さんにみられるように大切にしていかないとなぁ、などとぼんやり考えています。

そういえば、京都の蹴上に「○ホテル」という名門ホテルがありました。昭和天皇がよくお泊りになったことでも知られ、あまたの国家元首がご利用になった一流の宿です。外資に買収されて以降、なんか大事なものを失ってしまったように感じるのは私の気のせいでしょうか。今でも以前と変わらずラウンジのコーヒーは千円もしますし、車止めの脇からはお迎えした元首のお国の旗がずらっと誇らしげに掲揚されているんですけどね。たまに懐かしくなってのぞいてみると・・・少々残念な気持ちになっちゃうんですよね。

私たちにはブランドなどという大そうなものはありませんが、創立した1年前に掲げた思いや、みなさんと交わした約束を誠実に守り続けることで、「看板」を磨いていかなければなりません。ほんとうにささやかな看板ではありますが・・・。

Takahide Kita