コラム

■いやぁ、ショックです!

「幾松ほどの料亭がつぶれるかね・・・こんなことがあるのかね。」明治維新三傑の一人、木戸孝允ゆかりの料亭「幾松(いくまつ)」が経営破綻したというニュースを耳にしての感想です。

私は、たった一度だけですが、木戸の奥様の名を冠したこちらのお宿にお世話になったことがあります。三条の高瀬川近くにあるこの料理旅館には、木戸がまだ桂小五郎と称していた頃に、新撰組に打ち込まれた際についた柱の刀傷や幕府の役人から追われて、逃げ込んだ際に隠れていた長持なども現存しています。確か、建物自体も文化財に指定されていたように思います。そんな、幾松が資金繰りに行き詰って・・・なんとも残念です。

外国人観光客を当て込んで、にわかごしらえしたホテルがどうなろうと、別に気にも留めませんし、「へぇ~、そうなんや。えらいことでしたね」で終わりなんでしょうが、幾松のレベルになってくると、何かかけがえのないものを失ったような寂寥感におそわれます。

小田原のかまぼこの老舗、「○う田代」も破産で10月いっぱいで閉店のようです。小田原のかまぼこといえば、「籠清」が最初に思い浮かびますが、伊豆方面に出かけた際には、必ずと言ってよいほど小田原に立ち寄っていましたから、「○う」さんの味にも何度か舌鼓を打たせていただいたことがあります。

こういった老舗というか、脈々と受け継がれた伝統のようなものが、昨今の社会情勢の中で、少しずつ消えていくのはほんとうに寂しく、いたたまれない気持ちになります。私の身近でも、自宅近くでよく利用していた町中華や焼き肉屋といった馴染みの店が一つ二つと閉じていますしね。

世の中全体を見まわしても、コロナ前には1.6倍あった有効求人倍率もここにきて1.04倍(8月)に急降下、1倍を切るのも時間の問題です。私の教え子たちの就活状況なども少々心配になってきました。

みずほ銀行は正規職員を対象に週休3日、4日の勤務体系を発表しました。表面上は「働き方改革」における勤務の多様化を謳っていますが、実質的なリストラの一環といえるのではないでしょうか。みずほ銀行は以前このコラムでも取り上げましたが、3年前にいち早くフィンテックやAIを活用し、大幅な人員削減目標を発表していましたが、ここにきてそれらの計画の実行に踏み切ったということでしょうか。

こういった社会の現状や変化についても、私は子どもたちにありのままを伝えます。そして、「今、どうするべきか」を話します。そして、考えさせます。子どもたちに「明るい未来」や「無限の可能性」を語るばかりでは、いくら何でも現実離れも甚だしいでしょう。「そういった厳しいこともある程度は承知した上で、一人ひとりの子どもたちが社会に出ていくための準備をしている」という状況をつくり出すのも、私たちの大事な役割だと考えています。もちろん、その先にある「力強く、素晴らしい未来」を信じてのことですけどね。

Takahide Kita

■「美しい本」をいただきました

そういえば、最近、本を読むことが少なくなったように思います。以前は月に平均3~4冊程度は読んでいたんですけどね。新聞なども自宅で定期購読はしていますが、じっくり目を通すといったことも少なくなってきていますかね・・・。ついつい、スマホでニュースアプリのダイジェスト版を舐めるだけで済ましてしまう、といったことが多くなっています。

先日、かつて勤務していた会社の上司であった方から本を一冊贈っていただきました。私が、ちょこちょこ小旅行に出かけるのをご存じだったのかはわかりませんが、日本各地の季節ごとの絶景を集めた「美しい」一冊を頂戴しました。昨年にも、「ぜひ読んでおいた方が良い」といって、興味深いビジネス書をいただき、「なるほどねぇ」といった具合で、ありがたく一読させていただいたのも、いまだ新しい記憶です。

季節の折々にいただく菓子や果物といった進物もうれしいものですが、こういった知識や感動の「おすそわけ」はほんとうに有難いですね。贈っていただいた方の気持ちを考えると、ほんとうにうれしくなっちゃいます。

他人様に本を贈ったり、読むことをすすめるといったことは、案外「気を遣う」行程を伴います。その方の思考や趣味などを思い起こしながら、その人自身の現在の置かれた立場や情況なども推察し、その一冊を選ぶわけですから、ある意味「思いを込めたひと仕事」といえるかもしれません。

加えて、本にはその著者の熱い思いや積み上げてきた見識などが詰まっていますから、単に豪華なモノや美味しいモノで、相手を喜ばせるのではなく、その人の血肉になる、そして日々の生活における貴重な助言者にもなる、そういった「ありがたい贈り物」だとも思いますね。

実は、私にもこの10年来、傍らに置いて何度も読み返してきた本があります。新潮文庫から出版されている、城山三郎さんの「静かに 健やかに 遠くまで」という軽めの一冊です。城山さんはご存じの方も多いとは存じますが、「黄金の日日」をはじめとした歴史小説や、昭和を舞台にした企業小説を数多く手がけられた方で、その中に登場する人物個人の視点から、様々な「生き様」をリアルに描写されています。そういった登場人物の台詞の中から、「これは!」と思うようなものをダイジェスト版にして再編した一冊になります。人の一生において迎えるであろうステージや出くわす場面ごとに編集されていますから、その時々に必要とする「処方箋」を見つけやすい構成にもなっています。

私も、仕事や私生活で様々な問題にぶつかったときには、何度もこの本に助けてもらいました。私にとっては、ほんとうに有り難い「金言集」といえますね。

私も、これを機に、久しぶりに友人へ本の一冊でも贈ってみようかという心持ちになっています。

Takahide Kita