コラム

■まだまだ、すごい人がいるんだなぁ

昨日、たまたま原子力規制委員会の委員長を務められた田中さんをニュース番組で拝見しました。退任された後、ご家族と離れてひとり福島に住んでいらっしゃるようです。震災の際の原発事故でいまだに故郷に帰ることができない人たちの傍らに寄り添うように暮らしておられます。

私、この方を誤解していました。それこそ人を見た目で判断してしまっていたようで、ほんとうに恥ずかしい限りです。以前はテレビに登場されるたびに「所詮は世間知らずの御用学者さんでしょ!」なんて先入観をもって眺めていましたよね。ごめんなさい、謝ります。

「自分にやれることは限られているが、せめて地元復興のためのパイプ役としてできることを・・・」と静かに語っておられる様子からは凄みを感じました。ほんとうにすごいですよね。以前に福島を訪ねられた際にそこの人たちと交わした約束を忘れずにやっておられるとのことでした。科学のある分野でひとつのことを究められた方が最後の仕上げをしておられるように思えて、感動を覚えました。

「たいへんですよね」、「かわいそうですよね」なんて言葉にすることは簡単です。それを行動に移すには勇気と決断が必要になりますからね。場合によっては今あるものの何かを捨てなければならないこともあるでしょう。「その時、その人はどこにいて何をしていたのか」がその人の本性なんだとあらためて教えていただきました。

「頑張ってますよ」、「たぶん大丈夫ですよ」、「この内申では難しいですよ」なんて言葉にすることも簡単です。現状を表層的に説明するだけならその人でなくてもできるでしょう。「では、こうしていきましょう」と具体的な道筋を示し、自らが当事者として、それを生徒本人、保護者のみなさんと共有しなければ全く意味がありません。もちろん、そこには誠実で迅速さを伴った私たちの行動が絶対に不可欠です。

言葉を生業としている私たちですが、どんな綺麗な言葉でも、どんな勇ましい言葉でもやはり形にはかないません。その言葉に魂を吹き込むのは私たち自身の「行い」に他ならないですからね。

Takahide Kita

■ここにも「デザインシンキング」?

数日前の日経モーニングプラスの報道内容によれば、最近の繁盛店のポイントは陳列などの見た目だそうです。まあ、「そだねー」といった所感ですね。表題の「デザインシンキング」というのは最近になってしばしば耳にするようになった経済用語で、一言でいえばトータルパッケージとしての商品の見せ方や売り方のことですね。

これは個の技術を主体とした職人気質に寄って立つことの多い日本の会社が比較的不得手としていると言われているもので、日本企業にはトータルで見せるといった「戦略」が欠如している、なんてよく言われちゃいます。日本の場合は多くが「現場主義」で、質の良い「いいモノ」をより安く提供すれば、お客様は必ずわかってくれるという考え方なんでしょう。

この時期の学習塾の広告宣伝活動においても、「これもデザインシンキング?」なんて思わせるようなモノが目につきます。「無料」や「No1」が氾濫しているのは従来どおりなんですが、チラシを見た人の心の隙間に上手く入り込んでくるような心地良いフレーズが見てとれるようになってきましたね。「これ、ほんとうに見せ方が上手いなあ」、「この程度のことをここまでデフォルメできちゃうんだ!」と思わず唸ってしまうようなことさえあります。

一方で「人を見た目で判断するな」という昔ながらの教訓があります。私も全くもってその通りだと考えます。しかしながら、このフレーズの下の句は・・・「中身で判断しろ」ですよね。見た目どおりだったときは・・・商品やサービスの場合は「ひと安心!」なんですけど、対象が人の場合は「残念!無念!」というか、人に関する限り見た目どおりの場合のほうが圧倒的に多くありませんか。

昔、こんなことがありました。私の部下で言うことだけはデカいんですが仕事をはじめとしてあらゆるものがかなり「ルーズ&ダーメ」な奴がおりましてね。要するに「勘違い」の典型例なんですけどね。彼がよく言っていましたよ「おれは中身で勝負する」ってね。

「あのね、例えばビルゲイツが日本の総理大臣とノーネクタイにデニムで対談していたとしても誰も違和感持たないでしょ。そう、ビルゲイツには圧倒的な中身があるから。でも、お前はネクタイにスーツ着てなければ人前に出せないのよ。もうこれ以上言わせるな!」なんて説教したことを記憶しています。

私の感覚では「見た目で人を判断するな」と声高で言う人のほうが、そうでない人に比べて、見た目で人を判断しがちですね。気が小さいのに悪ぶって見せたり、自分を大きく見せようなんて御仁が多いようにも感じます。だって、しっかりと中身を備えて自分自身に自信を持っている人はそんなことを言う必要は全くないですからね。

私たちPEGは「人を見た目で判断するな、中身で判断しろ」を地でやっていきたいと強く考えます。というか、「見た目で判断することなく、中身を作り上げる」といったほうがいいかな。そういう意味では、同じ学習塾といってもPEGには競業はいても同業はいませんよね。

Takahide Kita