コラム

■私、「妖怪」らしいです

私、もういい加減結構な歳なんですけど、昔からの知人には「見た目は30歳の頃とほとんど変わらんな」なんてよく言われたりします。まあ、若い学生の頃からオッサンに見られていたということもあるんでしょうが、いまだに髪の毛にも白髪はほとんどありませんし、以前と比べても筋肉なんかもあまり落ちていません。外から見えない部分で、目のピントが合いにくくなったことには少々難儀していますけどね。(笑)

確かに、高校や大学の同級生たちは体形やお肌なんかもかなり経年劣化が進んできているようですし、特に頭の上に乗っかっているモノがかなり寂しくなってきていますよね。まあ、みなさん骨董品にはまだ早いですが、業種別でも政治家の世界を除けば、ほぼベテランと呼ばれる年齢ですからね。そんな連中からは「お前、ほんまは妖怪やろ!」なんて言われたりもします。

様々理由を考えるんですが、歳が10代の生徒たちといつも接しているのが一番大きいのかな、なんて思います。毎年、私はひとつずつ歳をとりますが、私の目の前にいる生徒たちは歳をとりませんからね。10年前も、今現在も、そしてこれからも、中学3年生は15歳です。気持ちのほうがアンチエイジングを強力に引っ張ってくれているんでしょうか。

でも、いくら外見は若く見られても、確実に齢を重ねてきましたし、自分自身の人生の折り返し地点はとっくに過ぎているとの自覚はあります。ここから先に残された時間はそんなに長くはないかもしれませんが、後悔しながらやっていく時間としては長すぎますから、自分に正直に、そして成功するにしても失敗するにしても自分らしくありたいとの思いで日々の仕事や私生活を楽しみながらやっています。

一方で、焦りはまったくありませんが、そろそろ自分のやってきたことの総仕上げをさせていただきたいとも考えていますね。

と言っても、べつに特別なことを新たに始めようというのではありません。今までやってきたこと、そこでの成功や失敗、積み上げてきた理想と現実、これらを踏まえて、自分自身が納得できるモノを具体的な形にしていくだけのことなんですけどね。あとは自分が大切にしている良き友人や隣人、そして自分の生徒たちのお役に少しでも立てれば、それで十分です。

あと最後に、もしほんとうに自分が妖怪なら、「ビビビのねずみ男」ではなく、「ゲゲゲの鬼太郎」のように強く、やさしく、そしていつも凛として前向きに頑張っていきたいものです。「リモコン下駄」や「髪の毛針」も一度試してみたいですし、意外と「猫むすめ」もかわいくて、好きだったりするもんですから。

Takahide Kita

■働く場所がなくなる!

私が子供のころには、勉強が嫌いで全くやらないような子が「そんなに勉強が嫌なら、高校なんか行かんと工場に出て働け」なんて親から言われているのをよく耳にしましたし、現にそうした連中が私のまわりや同級生にも何人かいました。

しかしですね、今では工場もほとんど人件費の安い海外に行ってしまいましたし、残っているのは熟練工のみなさんによって支えられているような金型などの特殊技術を売る町工場、伝統工芸などの工房ぐらいじゃないですかね。要するに、単純労働作業をもって働けるような町工場はほとんどなくなってしまったということです。

過日、三菱UFJ銀行がフィンテックによって30%の業務を人工知能をもって置き換えることを発表しました。ブロックチェーン技術によって低コスト化を進めるということです。続いて、三井住友銀行もソフトウエアの開発によって1,500人を削減する方向のようです。加えて、みずほ銀行はグループ全体で19,000人の削減だそうです。証券会社のトレード業務はすでにほとんどがAI(人工知能)による高速取引に置き換わっており、アメリカの大手証券会社ではかつて数千人いたトレーダーがすでに10名程度になっているなどの報道が毎日のようにニュースで伝わってきます。他にもAIによって、言語の完全翻訳が近々に可能になるなんて話もありますよね。翻訳業や通訳といった業種はこれからどうなってしまうのでしょうか。

一方で、わが国における花形の産業も時代とともに移り変わっていきます。かつては紡績、鉄鋼、造船、次には、金融、保険、そして、IT情報通信と目まぐるしく変遷してきました。そして、さまざまな変化を遂げて、再びかつての紡績会社なんかが世界トップレベルの炭素繊維技術をひっさげて主役に返り咲く、なんてことも起ころうとしています。まるで振り子が左右に大きく振れたり、時計の針のように周期的な循環をしているようにも感じられます。

今現在が働き手不足で、「仕事なんてその気になったらいくらでもあるわ!」なんてボーとしていたら、あっという間に時代が変わっちゃいますからね。

日本の企業は様々なものに対しての耐性をつけるのはほんとうに上手です。かつてのオイルショック時以降の省エネ対策、輸出産業の脱円安依存への対応と同じように、おそらく働き手不足も様々な技術革新によって克服してしまうことでしょうね。労働集約型の産業構造の変革は社会全体の効率向上をもたらすもので歓迎するべきことだとは思いますが、確実に人の働く場所は減っていくことになります。

さらに、日本国内で供給される労働力が企業が求める水準に達していなければ、海外から優秀で勤勉な労働力を入れざるをえなくなるでしょう。欧米諸国の先端企業の例を見るまでもなく、そう遠くない時期にそうなってしまいますよね。

産業用ロボットや人工知能、そして優秀な海外からの労働力の流入の果てに、10年先、20年先には私たち日本人の行う仕事としていったいどれくらいの職種が残っているんでしょうか。今、私の目の前にいる子供たちはどんな職業について、どういった水準の生活しているんでしょうか。

競争を極力排除し、ゆとりのある教育を受けて育った子供たちに、豊かで明るい未来が無条件にやってくるなどとは、私にはどうしても信じる気にはなれないんですよね。

Takahide Kita